相手に話してもらう事こそ成功のカギ
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
従来のトークでありがちな失敗とは
- 介護施設における稼働率向上実務のポイントシリーズ第 39回。
- 「聞く」ことにより相手の気づきを引き出すことの効果を理解したところで、その具体的な実践方法を考えていく。
介護事業所における飛び込み営業の悩みとは
前回、介護事業所における営業トークで必要なことは「しゃべる」ことではなく「聞く」ことであるとお伝えした。
それは、聞くことが営業先のケアマネジャーや病院の MSW の方のニーズを引き出し、ひいてはその先にいる高齢者のニーズを引き出すことで、必要なサービス提供に繋げていくことを目指すものであるとお伝えした。もちろん、それこそが営業トークの本質だが、一方で、介護事業所における営業強化においてありがちなテーマである「営業が苦手な職員でも営業がしやすくなり、かつ成果を出しやすくなる」ことが営業トークの技術向上に最も期待されている効果であることからも目をそらすことはできない。今回はその方向性について考察をしていく。
介護事業所では営業の専門家として雇用される職員は非常に少なく、つまり営業を得意としている職員もまた少ない。介護事業所における営業活動とは、そのようなメンバーで営業を行っていかなければならない難しさがある。営業が苦手な管理者・相談員が、それでも必要に駆られて居宅介護支援事業所や病院の地域連携室などに飛び込み訪問をすることは少なくないが、そうすると次のような悩みに繋がっていく。
● 飛び込み(アポなし)で窓口を訪ねても嫌な顔をされる、忙しい時間に迷惑ではないか
● 訪問時に何を話せばよいのか分からない、毎回同じパンフでは会話が持たない
● 自事業所の特色を熱心に話しても興味を持ってもらえない、訪問が成果に繋がらない
● 現場優先の状況の中、外回りの営業活動に割ける時間がほとんどない
いかがだろうか。営業を行ってきた中での心当たりがひとつならずともあるのではないか。
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「聞き」に徹することで解決する営業の悩み
前項の悩みとは、言い換えると営業訪問は歓迎されない、迷惑がられている、だからこそうまくいかない、という点に尽きるのではないだろうか。
そして、その原因は自分自身が営業が苦手であり、うまい営業トークができていないことにあると思っていないだろうか。
実際は、営業トークで話す内容が問題なのではない。相手にとっては、話題を押し付けられていることそのものに問題があるのである。
たとえば昨今、様々な動画サイトがあるが、無料のものであれば合間に CM が流れることも多い。同じ動画でも、自らが選んで観るものと、強制的に流されるものでは印象に大きな差があるのではないだろうか。営業トークでも同様で、相手の話を聞かされる時間というのは、まさに強制的に CM を流されているのと変わらないのである。では、どうすべきなのか。動画の例でいえば、自ら選んだ動画こそ見たいと思えるように、トークでも自らが話したいと思えることを話してもらえる状況を作っていくべきなのである。つまり、営業をする先の相手にこそ話してもらうことに専念をしていただく、訪問する側は聞きに徹する、というトークの手法こそが効果的となってくると言えるのである。
営業訪問する側が聞きに徹すると、前項の悩みはかなり改善する。そもそも、話をする側が迷惑に感じるとはなりにくい。話題も相手に任せるので、こちらの話題切れを心配することはない。相手の話題に会話を合わせるので、相手の興味の引き会話になりやすい。そして何より、話題がなければ無理に会話を拡げることはないので、営業にかける時間が短縮される。つまり忙しい中で営業がしやすくなるのである。
とはいえ聞きに徹するとしても黙って立っていれば相手が話題を提供してくれるわけではない。そこには聞きの技術があって成り立つ部分もある。次回はそこに焦点を当てていく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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